IKE QUEBEC/IT MIGHT AS WELL BE SPRING

It Might As Well Be Spring

It Might As Well Be Spring

その3。タイトルの語呂が実に良い。イット・マイト・アズ・ウェル・ビー・スプリング、思わず発音したくなるタイトルもそうはない。題して『春の如く』。ブルーノート4000番台にひっそりと輝くほのかな春の匂い。フランシス・ウルフ-リード・マイルスの黄金コンビによるあのジャケット、ルディ・ヴァン・ゲルダーの室温。アルフレッド・ライオンの眼差し。これがこうにも絶妙に絡み合ったレコードはブルーノート広しと言えどもそうはない。
アイク・ケベックのテナーは絵に描いたようなテナーである。テナーとは男の楽器、とは実に言い得て妙で、コブシの利いた言い回しをするにテナーは絶好の楽器である。アルトやソプラノではこうはいかぬ。その絵に描いたようなテナー・マン、アイク・ケベックは実は古くからブルーノート創始者ルフレッド・ライオンの片腕として働いていた。だからなのか、ベン・ウェブスターのように聴く者に安心感を与え、決して無理強いをすることはない。こいつを喰らえ的コルトレーン以降のテナー・マンには決して出来ない音感。そのテナーの対比としてフレディー・ローチのアシッド・オルガンは実に巧妙。春とは優しく、俺を待っている。に違いない。