THE BEACH BOYS/SURF'S UP

サーフズ・アップ

サーフズ・アップ

フェイヴァリット・アーティストを挙げるならば多分真っ先にNWWとBEACH BOYSを挙げるだろう。とりわけビーチ・ボーイズはここ数年のターン・テーブル占有率からしても未だに飽きがこない不思議なバンドの一つである。
何がどうしてこうなったか、このジャケット。恐らくはビーチ・ボーイズの最も暗い域に入るジャケとそのサウンド。前作(Sunflower)からその影響は顕著(特にB面)だが、更に奥に奥に沈み込んでいくジメッとした音像とメンバー全員の非凡な作曲能力が暗いと美しいのギリギリの線で木霊す。既に幽霊船長のような感のあったブライアンはここでは『till I die』『surf's up』の2曲(surf's upはsmile期の曲だが)で圧倒的な存在感を示すが、この盤の最大の聴き所はA面にある。この後、名曲『Disney Girls』を残したブルース・ジョンストンが脱退し、更なる低迷期へと突入するわけだが、この後も実は佳作が続くことをペットサウンズ周辺しか聞いてこなかったリスナーは知るべきである。

70年代の幕開けを飾った大傑作『sunflower』の商業的失敗を経て、マネージャーがジャック・ライリーへと交代。ジャック・ライリーは『surf's up』を引っ張り出しアルバム・タイトルに指示(当初はランドロックド)。前作で名曲『forever』を提供したデニスは映画出演のためここでは積極的な参加はないが、ブルース・ジョンストンの『Disney Girls(1957)』、アル・ジャーディンはメッセージ色の強い『Don't Go Near the Water 』を、カールは自身の絶世の歌声が聞ける『Long Promised Road 』『Feel Flows』とそれぞれ傑作とも言える作品を残している。ブライアンは『A Day in the Life of a Tree』(ジャック・ライリーがヴォーカルを担当)、『Till I Die』で存在感を示しているが、同曲の救い難いブライアンの精神性を垣間見れ(海に投げ出されたコルク栓に自身を投影)、絶望的なまでの終幕を綴る。今更語るまでもない『surf's up』は『smile』収録予定曲だったものをジャック・ライリーの希望で再録が成される。