HEINER GOEBBELS & ALFRED HARTH/Hommage/Vier Fuste Fr Hanns Eisler

Hommage / Fier Fauste Fur...

Hommage / Fier Fauste Fur...

時代の潮流というものを考慮した上で発言するならば、HEINER GOEBBELSという異才の音楽家は70年代後半ヨーロッパを代表するFREE MUSICの旗手である。そしてこのALFRED 23 HARTHとのデュオ、CASSIBERへの流れは諸々のシーンの源流とさえも言える。さて一度GOEBBELS & HARTHのベスト作として一連の作品が1枚にまとめてCD化(evvaより)されたが何故か廃盤(現在は87年のLive作が唯一リストに残っている)、そしてこの度晴れて1stと2ndがカップリングで奇跡のCD化と相成った次第(Rerより)。これを事件と呼ばずして何と呼ぶ、姐さん。というわけで、事件です。
GOEBBELSはECM等から作品を多々発表し、またFREE JAZZの括りで語られがちであるが、一般認識のJAZZからは程遠くどちらかというと作品自体の発表行為に重点を置く現代音楽に近い(SHADOW/Landscape~等)。『史上最強のデュオ』と呼ばれた彼らだが、それはこの後ダグマーのヴォイスを導入し、演劇的に展開(北京オペラ)した後年の作品にこそより相応しい(実際的に演奏形態としての「デュオ」では無くなるがより二人の強度が増していった)。この1st(Hommage/Vier Fauste fur Hanns Eisler)HANNS EISLERのブレヒト・ソングのカヴァーで占めるライヴ録音作。ゲッベルスと別の視点から作品の温度/湿度を上げているのがALFRED HARTHのサックスであろう(寧ろここでのゲッベルスは冷却装置であるかのようにハルトを支える)。まるでALBERT AYLERが乗り移ったかのような気丈で刺激的なソロを繰り広げ、テーマ部分においてもアイラーと同様原点修正を行うかの如くシンプルでメロディアスに展開、肝心な点はゲッベルスはコール・コブスでは無く、ゲッベルスであり続けたのが彼等の重要性を促進している。一方2nd(Vom Sprengen des Gartens)はアイスラー/ブレヒト・ソングを離れ、ラモー、バッハ等の作品を取り上げたスタジオ録音作。昨今の先人への偶像崇拝的なインプロヴィゼーションとは違い、極端に親密的で濃厚な即興とテーマの変奏、垂れ流す音は一音たりとも無く、息、唾を呑み込んでしまうライヘンバッハの滝一歩手前的邂逅である。即ち、傑作。