時をかける少女

時をかける少女 通常版 [DVD]

時をかける少女 通常版 [DVD]

失われた日本の原風景を想起させる町並(「坂道」の多用)と青春モニュメントたる学園風景。私たちは挙って己の青春時代と同調させるかの如く、無条件にノスタルジーをこれらに抱く。それら失われた時代に後悔や失意の念は誰しもあるが、それらに共鳴し同作や「耳をすませば」などは問答無用に90年代以降の青春原風景として成り立ってしまう。原作は今更言うまでもない筒井康隆の同小説で、筆者自身正統的続編と位置づけたように物語は原作(原作の20年後を設定)とは別人物のタイプ・リープ(過去に戻る)によって、主人公の周りの環境が刻一刻と変化していく様を描いている。自己中心的で人の思いを決め付けたような言動はこれら思春期に共通する行動、それらに対して逃避し、また向かっていく主人公の心の変化も巧みに表現されており(声優陣の素人臭さが功を奏しているいい例である)、タイム・リープによるスピード感も絶妙。中途半端なメッセージ性が無いのも良い。
ただ多くの人がそうであるように学生時代に救いのないような生活を送ってきた者にとってはかなりの苦行を強いる作品であり、ポジティヴな映画のはずが現実との乖離感によってひたすら憂鬱になるので相当の注意が必要である。