その1。オン・
ザ・ビーチ。それは女の匂い、子供の小便の匂い、缶ビールの匂い、サン・オイルの匂い。焼きそばの匂い。どこかしらで
ビーチ・ボーイズのhawaiiが聞こえてきそうな雰囲気。フィリップ・
コーランのオン・
ザ・ビーチはその対極を示すアフリカの呪詛的芳香、死者の匂い、祀りの匂い。部族の呪い。獣の叫び。何故に、オン・
ザ・ビーチなのか。コンセプトなのか、頭がおかしいのか、それともかのアフリカの海辺はこんな感じなのか。謎が深まるタイトルと、今や立派なジャンル・カテゴリーとなった「SPIRITUAL JAZZ」なる怪しげな部類で絶大な支持を集める1967年名作。フィリップ・
コーランはサン・ラー・アーケストラに59年〜61年の間参加していた事で有名。彼の率いていたバンド(THE ARTISTIC HERITAGE ENSEMBLE)は後のPHARAOHS→
EARTH WIND & FIREへ発展していく。フィリップ・
コーラン自身、
アメリカにおける
カリンバの第一人者で自身でも電子
カリンバなる楽器を操作する。こんな話も今や当たり前のこととして語られるようになったのは実は巷ではちょっとしたフィリップ・
コーラン・ムーヴメントが起こっているらしい(多分)。レア音源(singles)が出たり、
マルコムXトリビュート作が出たりとここ数年実に慌しく、そのうちCMでMOTHERHOOD(←この曲だけ唯一まともなJAZZ VOCAL作品)が流れ出すなんてことに。なわけないか。